ろじうらのあかり

好きだからこそやるんじゃない やってるからこそ好きなんだ

「俺たちはきっと大丈夫だよ」



 巧舟氏の愛犬ミサイルの訃報からずっと玉葱を切る以外の事で泣いている。

 ミサイルは「ゴーストトリック」で犬種も見た目も性格もそのまんま(とは後から知った)で、ゴーストトリックでの描写を見ているだけで「巧舟という人には犬という存在、生命に対しての尊敬の念がある」という事が伝わってきたし、ゴーストトリック公式に飛んでミサイルの声を聞いたら耐えられなかった。DS、3DS以外にもiOSで出ているのでこの際もうなんでもいいから遊んでくれ。彼は素晴らしい「イヌ」の魂を持ち合わせている。

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 ずっと読みたかった「皺」を読んで、後から後から涙が出てきた。「起こるべき事が起こる」ラストに向けて全てを組み立てていくその誠実さはどこから来たのかと思っていたが、作者パコ・ロカ氏の「身近で尊敬していた人が変わって壊れていき、失望を抱いた」という体験が執筆のきっかけと聞いて納得した。
 「老い」は2018年現在、人間の誰にも避けられないのにタブー氏されるのはどこの国でも変わらない。自分の将来について先が見えず「そのうちどこかで野垂れ死ぬかもな」と考えたとしても、具体的に「身体や脳のどういう所にガタが来て、どういう課程を経てどれぐらいの期間で野垂れ死ぬのか」という詳細について考えるのは恐ろしい事だ。そして何より、自分が死ぬ時隣に誰かは存在するのか、という事についても。スペイン版で「自分の子供の髪を梳かし直す」ように追加されたラスト1ページは、きっと何でもない事なのだ。だがそれは、「ああならないためだったらなんでもする」という事に違いないのだろう。それを言った本人が、その記憶を失ってしまったとしても、その言葉を覚えてくれる友人がいる。それが恐らく「孤独ではない」という事なのだ。

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 私はあなたの成した事の全てを知らない。
 けれど、あなたが生み出したキャラクターは生き生きと人間らしく、あなたがスクリーンの中で見せる姿は微笑ましく、胸躍らせることに年齢など関係ない事をいつだって思い出させてくれた。
 おやすみなさい、スタン・リー。
 あなたのいた世界で、あなたが遺したものと一緒に、もうしばらく生きていきます。