ろじうらのあかり

好きだからこそやるんじゃない やってるからこそ好きなんだ

感想:「映画 がっこうぐらし!」


 
 見てきました。
 ネタバレなしで言うと、

 原作を尊重して再構築しながら1本の映画としてすっきりまとまった、どこに出しても恥ずかしくない立派な「がっこうぐらし!」でした。

 「らしさ」がしっかり詰まっていたので、アイドル配役とかキャベツ作画崩壊とかマジでどうでもいいから、劇場で自分の目で見て判断してくれ。本編のキャベツはちゃんとキャベツでした。土から生えてたから安心してくれ。

  ちなみに私は放映当時のアニメを完走したぐらいなので、原作についてはwikiぐらいの知識しかない状態です。


 



 ゆき、くるみ、りーさん、みーくん、そしてめぐねえ。重心は、スコップでゾンビを倒し道を拓く役目を持ち、「転んでもめげない」、諦めない女の子として描かれるくるみに寄っている印象でした。でもあくまで「主人公属性」としてであって、特別多いとかそんな事はなかった。
 学園生活部のみんな、一人一人に個性があって、それぞれ違う「強さ」と「弱さ」があって……という所をしっかり描かれていたの、よかったです。
 傲然と立ちはだかる「ゾンビパンデミックが起きて、学園内の生き残りは私たちだけ」という現実と、「(極限状態でも)明るさ、人間らしさを失わずに生きよう」という思いで生きる日常のギャップも「らしさ」だと思うんですが、小道具など小さいところにも手を抜かず本当に凝っていて、それはそういう所から「日常」が透けて見えるからなんですよね。
 「あのシーン」、アニメ1話で何度も見たし分かっていたはずなのに、最高にゾッとしました。いやまじ……まじで……。

 見終わってから「キャストの違和感って冒頭ぐらいしかなかったな……」と思ったのですが、むしろ違和感があったの、冒頭ではゆきちゃんがまだ幼児退行する前の、「ちょっと変わった今時の女の子」だったからなんだろうな……。きららネタが入っていてにっこりしてしまったな。

 めぐねえは国語の先生ではなく「保健室の先生」で、保健室、めぐねえは事件が起こる前のゆきにとって「避難所」でありその象徴でした。だとすれば、「避難所」を失ったゆきが幼児退行を起こし、イマジナリーめぐねえを作って自分の心に避難してしまう事はある種自然な流れのようにも思えるので、ここら辺はわかりやすく伝えるための良改変だったのではないかと思います。彼女の「最後の行動」も、とても……よかったな……。

 実写の役者演技については上手く語る言葉を持たないのですが、ラストアイドルの皆さんの肉体の躍動がね……よかったですね……「かれら」の屍肉ばかりが蠢く学園の中で、日々を必死に、懸命に生きる彼女たちの姿がとても輝いていました。特にくるみちゃんだよ……スコップを持ってゾンビをボコる所とか伸びをした時の腹チラとか「健康」って感じですごくよかった。足も走ったり力が入る瞬間筋肉が浮くのが見えるんですよね、原作の海法さんもTwitterで仰っていましたが、「人間の体が持つ迫力」という、実写ならではの特徴が「魅力」としてよく伝わってきました。
 原作者としてのテキスト、漫画、アニメ、実写。その全てで「制作における方法論」というのはまったく別物なので、その全てでがっこうぐらし!」をきちんと構築するのは、とても大変なことだと思うのですが、それが叶うのは、「作品の本質」という芯を無視せずに向き合うクリエイター、役者さん、スタッフの皆さんあってこそだと思います。

 良いものを見せてもらいました。映画版の彼女たちは殆ど不穏を引きずることなく「卒業」しましたが、これから多くの苦難があるのは想像に難くありません。
 どうか幸あらんことを。あの日4人で見た街の灯りが、真実になりますように。

 PS:
 エンディングロールがいかにも低予算・タイアップ臭すごくて苦笑していたら、ラストで無事死亡したので最後まで席は立たずにいような。