ろじうらのあかり

好きだからこそやるんじゃない やってるからこそ好きなんだ

みにくいモジカの子:まとめと細々した話


 俺はモジカの話を書ききらないと次に進めない気がどうしてもしてしまうからモジカの話をするぜ

 という訳で、演出とか、個別ルート以外での全体的な設定周りのお話と、ライナーノーツ関連と、あと8月13日に行われたニトロプラス美少女ゲームトークショー(live配信の範疇)周りの話も含めて……と思ったんですけど……書きたい話が多すぎる!!

 個別ルートの感想は個別記事があるのでそちらでどうぞー。推奨攻略順ではなく、私の攻略順です。

 双葉みゆ九鬼綺羅々四月一日胡頽子花椿許斐鳴子

 

 

・各ルートの「笑子さん」
みゆルート:
 みゆに復讐されてボロボロの種崎くんに「あなたを殺すのは私」とリレイで告げ、直後に鈍い音がして種崎くんの視界と意識は途切れる、のでマジで笑子さんが種崎くんを殺したっぽい
胡頽子ルート:
 胡頽子の才能を開花させた引替にモジカを使いすぎて身動きが取れなくなっている種崎くんを殺すよう蜂矢に指示(蜂矢の証言)、蜂矢は指示を実行して千枚通しで種崎くんの脳味噌を不可逆的にいじる(ニトロ的表現)
綺羅々ルート:
 放送室での復讐の時、綺羅々に逆襲され映像を再生できない種崎くんに変わって蜂矢の証言映像を再生する (みゆではない、なら誰だ?という種崎くんの疑問)
 綺羅々を追い詰める最後の手段として蜂矢の殺害画像をリレイで送る
 蜂矢が殺された事で追い詰められた種崎君に「九鬼組の人間が迫ってる、逃げなさい」とリレイを送る
 最後の最後、タマサで固めた嘘に身をやつして綺羅々への幸福な愛を抱いたままの「ビーくん」に「そんな終わりは許さない」「あなたの名前は種崎捨」とリレイで真実を突きつける(九鬼組の人間にまで指示が届いていた)
椿ルート:
 種崎くんにリレイを送り「笑子」を意識させ、種崎くんが笑子を探すうちに「九鬼綺羅々がみゆに告白するよう指示した」と思っていた冒頭の告白は、そもそも綺羅々が笑子に「みゆを種崎捨に告白させろ」という指示を受けていたことが判明する
 種崎くんを魂正神社の奥の院に来るよう指示し、コンセイサマに呑まれかける椿と対峙させる
白部屋BAD:
 モジカが他人にバレ、何者かに捕らえられ「人の心を読む道具」として白い部屋で飼い殺しにされている種崎くんに「私は失敗した」「あなたは自由になって」とリレイを送る
鳴子ルート:
 椿を助けられなかった種崎くんに「逃げたわね」とリレイを送る
 種崎くんのモジカ能力をクラス全員にバラして逃げ場をなくす(以後は「笑子=鳴子」なので、どれがどっちなのかは不明)

 超人か?????
 というのはさておき、「笑子=鳴子」という事を踏まえると、行動にも一貫性があるというか、種崎くんが自分以外の他人に執心してもそれをどうこうしようとはしないが、笑子、鳴子として不自然にならない範囲で種崎くんを助けようとしたり、みゆルートで「あなたを殺すのは私」という事は「すべての始まり」に対して確実に責任感を感じていたんだなぁ……など感じ入る所がいっぱいある。あと「「真実」を求めておきながら「嘘に浸って死のうとする」のは許さない」とか、みゆルートの腹パンとか、どういう気持ちでやってたのか……おお鳴子……。
 あと「鳴子の行動は許されるのか」という事については、少なくとも「種崎くんは受け入れた」という事だけが事実(全てが種崎くんの視点で語られているので)だし、そもそもEDの歌詞をよぉちゃんと読めよぉ今(通常版発売前)その事について話をできるなら初回限定版で買ってるんだからサントラの歌詞カードを読んでくれよ、とは思っている。

・「完全主人公視点」という事について
 このゲームは「視界に入れた人間の心を文字にして「視る」事ができる主人公」の主観視点100%で事が進み、分岐もその場その場の行動や発言ではなく「顔を上げる(=モジカを使う)か上げないかで分かれ、UIもウィンドウはなし、文章は「画面の中心に1行ずつ表示される」という徹底ぶりで「種崎捨」という一人の男の子のお話が描かれます。
 なので、「種崎くんが知らない事は知らない」「種崎くんが認識している事しかプレイヤーも認識できない」という構造にならざるを得ないわけで、まあでも「樹望町」という土地のあれこれ、一番大事な所はほぼ明かされているから謎明かしという面で不満を感じたりすることはありませんでした。そもそも種崎くんは探偵じゃないしな。
 個人的に「完全主人公視点、一人称の文章という、ともすればプレイヤーが主人公とシンクロしかねない構造でありながら、はっきりとした名前を持った主人公にしたのは何故なのか?」という事は体験版頃にちょっと思ったんですが、まあ、メタ的に考えればそれもうやったもんな、という気持ちもその時点でありました。
 今トゥルーまでクリアして、「種崎捨の主観を視た」身としては、なんとなく
種崎捨はあなたではない。これはあなたの話であり、あなたの話ではない。誰かの話でもあり、誰かの話でもない。これは、「人間」についての話である
 なのかなーって、思っています。プレイヤー一人一人に、キャラクター達の中で誰かの何かが、どことなくひっかかるような、そんなお話なのかなって。
 あと、鳴子ルートのクライマックス、「信用できない語り手」を逆手に取ったような気がして結構ゾクゾクしました。それを言われたら読んでいる人間側が疑わざるをえないという。

 それにしても「完全主人公視点」、恐ろしい言葉ですね……ニトロ公式Twitterでその単語を見たときは真面目に「気でも狂ったんじゃないのか!?」と思いましたし、同時に「あーーーーこれは、はましま憲夫でないと無理です、そりゃはましまさんに依頼が行きます」という無限大の納得がね、ありましたね。後に「完全主観視点で描くということを考慮に入れて原画家さんの依頼をした」という話もあって、やっぱりなーと思いました。
 最初の発表時の「100%エロスチル」という発表(過去に沙耶の歌で「エロCGを全体の3割入れます!」という公約をわざわざ発表したメーカーです)で「えっどうなの……それではましまさんって事は「えろげー!」みたいな馬鹿ゲー路線ってこと?」とか呑気な事を考えていたら、視点人物がかざした手によって描かれているヒロイン全員の表情が隠れ、ど真ん中に「僕は、君の醜さを知っている。」というフレーズがのったキービジュアルが発表されて「フギャーーーーーーーーー!!!」ととんでもねえ事態に遭遇して全身の毛を逆立てる猫みたいな声を出した覚えがあります。閑話休題

・各ルートでの「愛」について
 種崎くんの人格形成の根底にある「愛されたかった」がはっきりと明言化されるのは鳴子ルートですが、椿ルートで出てきた「共感」という言葉は、要するに「愛」の言い換えであり、各ルートの種崎くんの根底にはやはり「愛されたい」という意識がありました。
 みゆルートでは「彼女が心底から楽しそうに笑って、その笑顔が美しいから」というのと「君を壊した責任を取る」という形で現れ、
 胡頽子ルートでは「彼女の欲望を暴けるのは自分しかなく、そこに僕の居場所がある(さなかに居場所を見つける)」であり、
 綺羅々ルートでは「形は違えど誰にも正しく愛されなかった、自分と鏡映しの君を放っておけない」と「君の嘘の通りに振る舞えば君に愛される」であり、
 椿ルートでは「相手の気持ちよさが気持ちいい(=共感)」でした。
 人は自分と同じか、似た価値観の人に親近感や好意を抱きやすいという心理が示す通り、同じ気持ちや感想を共有して分け合うのは愛の入り口ですし、そもそも種崎捨は誰かに愛されたかったので「相手の気持ちいい事をする」「相手の気持ちよさが気持ちいい」「相手の喜ぶことをすれば愛される」という、半ば奉仕じみた心があったのかもしれないなーって思う。種崎くん、精神的にはすごいドMだよな(きららファンタジアの方を見ながら)……。というか、愛されたくて、捨てられたくなくて親の喜ぶことをする子供そのもの、椿ルートでは子供が赤ん坊に対して手本を見せようとする所そのものなので、やはり鳴子さんのバブみ強制潮吹きカウンセリングは必要だったんだな……。

・音楽について
 公式サイトのハタユウスケさんのコメントで

>「シューゲイザーをお願いしたい」、断る理由はない。
  
 とありましたが、正直この一文で泣くっていうか……美少女アダルトゲームだろうがなんだろうが、得意分野をお願いされたら断る理由はないという心意気を感じてな……あとayumiさんもですけど「バイオさんと話し合いながら作っていきました」って書かれてるの本当に胸が温かくなる。音楽そのものについては椿ルート感想で語っているので割愛するとして、
 「やっぱ夏はシューゲイザーだよ」という気持ちで胸が一杯です。歪んでいるのに美しく、美しいのにどこか歪んでいる、「美しさと醜さ」というテーマが根底にあるこのゲームにとてもマッチしていて、最高のトラックでした。ありがとうございます。
  OPとEDの他、「淡」「怨」「史」「渦」「朧」が特に好きです。「躍」はまた別枠で好き。


・例のアレ
 あそこで「種崎君を魚に例えると……やっぱり くさやかな」という結論を出してるみゆちゃん、「くさや=嫌われがちだけど好きな人もいる」という事を踏まえるとガチのマジで観察力がヤバいので、みゆルートの説得力が無限大ですね……。
 あと「祓ってやる」「黒ペニ先生があなたを犯すわ」というパワーワード、大好き。ラスボスで笑い転げたのはすでに申し上げましたね。

・ライナーノーツ
 私が死んだら、棺には赤いチューリップを納めてくれ。
 あとさっしーのライナーノーツに元気よく笑いました。